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末端を意識しすぎると「硬く」「弱く」「遅く」「不器用」になる。

何か物を持ったり、道具を扱ったりする場合に、手先・足先に意識を向けすぎて、手脚の末端部分に力を入れ過ぎていませんか?

「運動が苦手」「身体が硬くなりやすい」「すぐ疲れる」「運動をすると手足に痛みが出やすい」「怪我が多い」といったようなイメージを自分自身に持っている方は要注意です。

今回の記事では運動が苦手な人、運動が得意な人との間には身体の扱い方にどのような差があるのかを『力を入れる・動かす部位』という観点から考えてみましょう。

手先・足先に力を入れてみよう。

さて早速ですがラジオ体操第一の中にある「身体をねじる運動」「からだをまわす運動」をやってみましょう。

まず①最初に手をブラブラと振ってから、その感覚を無くさないように行います。
②次に手を強く握りしめた状態のまま力を緩めないように行います。

①と②のどちらが身体を大きくねじり、まわすことができたでしょうか?

次にボールを蹴る運動をやってみましょう。

手の場合と同じように①最初は足先をブラブラと振ってから、その感覚を無くさないようにボールを蹴ります。
②次に足首から先に強く力を入れた状態でボールを蹴ります。

①と②のどちらが力強く、思い通りの方向にボールを蹴ることができたでしょうか?

末端に力感があると…

運動が苦手な方の動作はどのようなものであれ、力を加える部分(末端)にばかり意識が大きく向き、力を加える部分から離れた部分(体幹やその他の手足)への意識が弱くなりがちです。

先ほどの手先・足先に「ギューッ」と間延びした力を入れ過ぎている動きが運動が苦手な人に多い動き、力が抜けている動きが運動が得意な人に近い動きとなります。力を抜いた状態の方が「楽に」「大きく」「思い通り」に動けましたよね。

他にもパンチを繰り出す動作を考えてみたときであったとしても、「パンチする」と思った途端から手に力が入りっぱなしでパンチし終わった後もまだ力が抜けていないといった動きが運動が苦手な人の動きです。このようなパンチは力感が強く動きが大袈裟になりがちで相手に動きが読まれやすいだけでなく、「末端(手)には強く力を込めているにも関わらず、伝わる力は小さい」動きとなり動作効率が低下します。そのような動作がはたから見る者にとって「鈍臭く」「間抜け」に見えてしまうのです。

本来パンチを繰り出す時に手を強く握りしめるべきタイミングはインパクトの瞬間のみです。それまでは手の力を抜き、身体の中心部分もしくは脚で力強く速いパンチに必要な動作を作り上げています

他にも瞬間的に素早く強い力を生み出せるのは、筋肉の脱力状態から最大収縮状態まで瞬時に切り替えられるからに他なりません。ではその脱力状態とはどのようなものなのでしょうか?

脱力状態を身体で理解する。

「力を抜け」と言われても自分では抜いているつもりだからどうしていいのかわからない…という方は少なくないのではないでしょうか。

脱力状態をつかむことが難しい最大の理由は、『脱力という感覚そのものがあるわけではない』ということ。力が入っている感覚は力感として非常に感じ取りやすいので理解しやすいのですが、「力感がない状態」が脱力感そのものなので『無いものを無いと感じとる』難しさが脱力を習得する上での最大の課題です。

この脱力状態を身につける上で効果的な方法は以下の通りです。

①脱力できる身体環境を整える

そもそも力が抜ける身体になっていなければ脱力はうまく行えません。長期間にわたって筋肉のコリや硬さを感じている場合は『Fascia』のケアから取り組んでみましょう。

②力感を感じたらすぐにその力感を消すことを習慣化する

「力が入っている」という感覚を感じたら、即座に力を抜くためのアクションを起こしましょう。効果的なのは力感を感じる部分を『揺らす』ことです。

③力が抜けた動きを全身運動として感じとる

力が抜けた効率の良い動きとはどのようなものか、それは言葉ではなく体感してみないと理解できません。

ここから先ではこの力の抜けた動きを身につけるためのコツをご紹介します。

大きな力、大きな動きを体幹から生み出す。

どうすれば手足の力み無く動けるようになるのか?その答えは、「背骨・肋骨・鎖骨・胸骨・肩甲骨・骨盤からなる『体幹』から動きを引き出すこと」です。

上の図をご覧の通り体幹部分は非常に多くの骨・関節で構成されており、それらのを動かすための筋肉も非常に多く存在しています。この体幹部分は全体的に筒状の構造をしており筋肉の働きによって剛性を高めやすいだけでなく、多様な関節の動きによって捻れたり、曲がったり、たわんだりといった複雑な動きが可能となっています。この動きを主な力源として扱い、手足の末端部分へ伝えていくことで大きなパワーを生み出すことができるようになるのです。

体幹を固めるトレーニングではなく、体幹の扱い方を理解するトレーニングを。

ではこの体幹の扱い方を身につけるためにはどうすればよいのか?

ここ数年来「体幹トレーニング」と称されて取り組まれてきたトレーニングの多くは「体幹を一つの塊として硬く固める」トレーニングが主でした。もちろんこのような能力も必要なのですが、「固める」という能力は、数ある体幹機能の一つでしかありません。柔らかくしなやかに、かつ手脚の動きと自然と連動して体幹を扱えるようになるためには「固めすぎている」状態は逆効果にもなり得ます

体幹を柔らかくしなやかに動かせることを基本に、必要な場面で瞬間的に体幹を固めることができる。そしてさらにその次の瞬間には力を抜いてまたしなやかに動ける体幹に戻すことができる。このような体幹の扱い方(力の入れ方、抜き方、動かし方、体幹の細かな動きの感じ方、外力の感じ方など)を目的とする動作に合わせて身につけていく必要があるのです。

体幹から生み出した力を適切に伝えるために必要なものとは?

ここまで体幹部分の話ばかりが続きましたが、手脚は脱力さえしていればよいのかというとそうではありません。腕には腕、脚には脚の適切な力の伝達・動きの繋がりを作り上げておく必要があります。

腕の軸

腕の軸感覚を養うために必須であるのが『脇を締める』という身体の扱い方。これが扱いこなせるようになると必要最小限の力で骨を介して力を伝えられるようになります。

脚の軸

脚の軸感覚は、前足部(つま先)・足裏で地面を捉え地面から得た力を体幹、腕まで適切に伝えられるようになることで身につけることが可能です。

体幹と手足の間の動きの連動性(動きの繋がり)

手・足・体幹からの軸による力の繋がり(伝達)が『直線的』であったのに対して、動きの繋がりは捻れによる『螺旋的』なものです。この螺旋的な動きの連動性の基本は、指先から足裏までの捻れを繋げる動きである「纏絲勁 (てんしけい)」というを介して身につけるのがオススメです。

運動音痴から動きの達人へ…

力を加える末端から意識を離し、力を加える対象から遠く離れた部分、一見関係ないように思える部分を扱えるようになることが動きを達人に近づけさせます。そしてもはや身体を扱う感覚すら失い、気づいた時にはすでにその瞬間の状況に最適化された動きが自然と引き出されているのが達人の領域なのかもしれません。

簡単に到達できる領域ではありませんが、今現在自分自身の身体や動きに足りないものを一つずつ身につけることで、一歩ずつ達人の領域に近づいていくことができます。

私もまだまだその道半ばです。一緒にがんばりましょ!

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堤 和也

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