野球のバッティングやゴルフのスイングなど上達していく過程で一度は『脇(わき)を締める』という言葉を聞いたことはありませんか?
脇を締めるということは、単に見た目に身体の腋(わき)の部分を閉じればいいわけではなく、「脇が締まっている」と同時に「脇が利いている」ということがどのようなものであるのかを動作の中で感覚的に理解できるようになる必要があります。
この『脇を締める』『脇を利かせて腕が扱える』と、腕が上手く使えるようになるだけでなく、女性が特に悩みやすい「二の腕のたるみ」を引き締めることにも繋がります。
今回の記事では、脇を利かせた腕づかいの最も基本となる『脇が締まっている』感覚を掴む方法をお伝えします。
腕が上手く使えているとはどういうことか?
腕が上手く使えるということは、
①体幹部分から腕として使うことができ、
②腕が長く見え、
③手に力が伝えやすく、
④肩や肘などへの負担が少ない
などといった状態と考えてみてください。
要するに無駄なく効率よく腕が扱いこなせるということですね。
腕が上手く使いこなせていない場合、このすべてが逆転し、
①腕を腕だけとしてしか使えず、
②首・腕が短く見え、
③手に力が伝わりにくく、
④肩や肘などへの負担が大きい
といった状態となります。
腕が上手く使えているのかどうか、最も簡単に見分けやすいポイントは「肩が上がっているかどうか」。
肩が上がる、すなわち「肩と耳が近い状態」だと、肩甲骨を引き出し腕と体幹との連動性を高める『前鋸筋(※後述)』に力が入らず、腕を腕だけでしか使えない状態となります。
逆に腕が上手く使えている時には、『前鋸筋』の働きにより肩甲骨と体幹の連動性が高まり、肩が引き下げられ、首と腕が長く見えるようになります。
進化の過程から考えるヒトの腕
四つ足歩行 → 樹上生活 → 二足歩行
元々私達ヒトは、哺乳類に進化して以降、四つ足歩行から樹上生活に変わり、地上に降りて二足歩行に進化したと考えられています。
我々が手、腕として当たり前のように使っているそれは、元々は『前脚』だったのです。
前脚として身体を支える脚の一つだったものが、いつしかモノを掴めるようになり、掴める前脚で木にぶら下がることができるようになり、二足歩行が安定して行えるようになった現在、前脚で身体を支える必要はなくなり、指先を器用に動かして様々な道具や機械を扱えるようになりました。
このように進化してきたヒトの腕は本来、身体を支えたり、ぶら下がったりしやすいような構造をしています。要するに骨構造と筋肉の付き方ともに四つ足動物と我々ヒトとの間に大差はないということです。
進化の過程において、突然変異が起こったときに今までになかった新しい機能が生まれることがありますが、そのようなものは非常に稀で、ほとんどの場合が元々存在する機能の転用により、機能・形態の変化が起こると考えられています。実際に多くの哺乳類の骨・筋構造を見てみても共通する部分が非常に多くあります。
腕を首から吊り下げて使ってしまいがちな我々も、四つ足歩行動物に倣(なら)って前脚でうまく身体を支えるということをした方が腕を機能的に扱えるようになるのです。
『脇を締める』とは?
『脇を締める』とは、前脚として腕を扱う際に使うべき筋肉に力が入った状態だと考えると良いでしょう。ただし「この腕は前脚だ」と考えたところで、脇が締まる訳ではありません。
『脇が締まっている』状態とは、「肘が肩から遠い位置を通り、胸や鳩尾(みぞおち)の前に入り込むような動きの中で引き出される筋収縮が起こった状態」と私は定義しています。
つまり単に腋(わき)が開いてる、閉じているの問題ではないということです。
ではこの筋収縮とは主にどの部分を指すのでしょうか?
脇を締めるために働く筋肉
以下に挙げるものが全てではありませんが、主にこれらの筋肉が適切に働いていることが大前提です。
前鋸筋
前鋸筋は、肩甲骨の裏側(肋骨側)から肋骨につながる筋肉です。図のように放射状についていることから下方から前方、上方へ肩甲骨を引き出します。この前鋸筋の働きにより腕と肩甲骨が連動して動くだけでなく、腕が長く使えるようになります。
また、前鋸筋はお腹を斜めに走る腹斜筋との繋がりも強いため、前鋸筋が扱えるようになると、同時にお腹にも力が入りやすくなります。すなわち腕の動きに腹筋も連動して使えるようになるということですね。腕をお腹にまで繋げて使うために欠かせない筋肉です。
肩関節外旋筋群•三角筋後部線維
肩の外旋筋と三角筋後部線維は、二の腕を外向きに絞るようにねじる働きがあります。脇を締める動作においては、肘(肘頭)の向きをコントロールするために重要な筋肉です。
上腕三頭筋
上腕三頭筋は、上記の筋肉を利用して体幹部分から肩甲骨、上腕骨まで繋がった力を肘を介して前腕に繋げます。
脇を締めると二の腕が引き締まる
脇をうまく締めることができると、
・二の腕の裏
・腋の後ろ
・腋の下
に自然と力が入りやすくなります。
ここまで説明すれば、多くの方が既にお気づきかと思いますが、これらの部位は、冒頭でも申し上げた女性が気にしやすい「二の腕のたるみ」に繋がりやすい部分です。つまり二の腕がたるんでいると感じる方は、これらの筋肉が普段の生活の中でうまく使えていないということを意味していると考えましょう。
普段から『脇を利かせた腕の使い方』が出来れば、いつも通り手を動かすだけでも二の腕が引き締まりやすくなるのです。
それでは脇を利かせるために、「まずは脇を締めるということはどういうことか」を実際に動いて理解してみましょう。
Twisting Arm – 脇締め –
『脇締め』は、筋肉を鍛えるトレーニングという側面よりも、「脇が締まっている」「脇が利いている」という『感覚』を主に養うトレーニングだと考えて取り組んでみてください。
腕で体重をうまく支えられるようになることで、四つ足動物的な前脚機能が高まり、腕の扱いが上達します。
見た目の動きとしては地味に感じるかもしれませんが、この動作に含まれている動き一つ一つに重要な意味が込められています。今後「脇を締めて」「脇を利かせて」トレーニングを行う上で非常に重要な要素となるので、集中して身体の感覚を研ぎ澄ましながら取り組んでみてください。
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THE コツ™️ TRAINING
堤 和也