スポーツをしている人にとっては、一番身近な怪我となる『捻挫』。
一度してしまった捻挫を何度も繰り返し、癖になってしまって困っていませんか?
今回の記事では、この繰り返す捻挫の負のループから抜け出すための考え方をお伝えします。
先に結論を要約すると、
捻挫を繰り返す選手は『靭帯に負担をかけすぎる動きを繰り返している』ことが原因であり、『靭帯に負担をかけない動きを身につければ繰り返す捻挫は回避できる』ということ。
つまり、繰り返す捻挫は「靭帯に負担をかけない動きを、トレーニングを通して身につけることで改善させられる」に尽きるのですが、なぜそう結論づけられるのか、これだけではなかなか「?」→「!」にはならないと思うので、順を追って説明していきます。
※この記事はカラダ Design Lab.のHPで紹介しているものを一部改変、加筆したものです。
靭帯の役割とは?
捻挫により損傷されるのは『靱帯』です。
靭帯がもつ機能として、
①骨と骨をつなぐ
②関節の動く方向を規定する
③関節の機能を超えた過剰な動きを抑制する
の3つが挙げられます。
①『骨と骨をつなぐ』
これについてはそのまま文字通り。
②『関節の動く方向を規定する』
骨と骨がつながる部分が関節ですが、関節にはその構造によって動きやすい方向が決まっています(部位によって関節の形状が大きく異なります)。この骨と関節の構造に基づいて、「この方向に動くのがこの関節の役割だよ」と『案内役』を靭帯が果たしています。
③『関節の機能を超えた過剰な動きを抑制する』
②の案内役としての役割と同時にその動きから逸脱しないために靭帯が大きく働いています。「これ以上動いたらダメだ」と『防御線』を張っているのです。その防御線の許容範囲を超えて関節を動かしすぎたもの、負担をかけすぎた結果生じるものが『捻挫』です。
捻挫は靭帯を引きちぎる怪我
つまり捻挫とは本来の関節の運動方向とは異なる方向へ、急激な強い負荷が加わることにより、靭帯の許容範囲を超えて伸張され、靭帯の線維が断裂した状態をいいます。
ヒモが部分的にちぎれた状態を想像していただけるとわかりやすいかと思いますが、ヒモをその幅の半分程度ハサミで切るとその分ヒモが長く弱くなります。これが損傷後の靭帯の状態です。(靭帯損傷も完全に断裂して靭帯としての機能を失う状態から、部分的に断裂する状態まで様々です。負担があまりにも強いと骨折を伴う場合もあります。)
捻挫がクセになる、その本当の理由とは?
基本的に靭帯は捻挫によって一度伸びてしまうと、
捻挫をする前の元の正常な状態には戻りません。
「捻挫が治癒する=靭帯が元通り正常な状態に戻る」と考えてしまいがちですが、そうではなく、断裂と同時に出血など炎症反応が起こったものが、単に沈静化した状態だとお考えください。
一度靭帯を損傷してしまうと「靱帯が伸びる」とよく表現されるように関節は緩くなりやすく、損傷したときと同様の動きに対して、靭帯が関節の動きを止めようとする働きも弱まるのです。
しかし損傷された靱帯そのものの特性だけが、癖になる理由ではありません。
2度目以降も捻挫を繰り返してしまう場合には、そもそも損傷した靭帯に負担をかけてしまうような、関節の構造から逸脱した動作・カラダの使い方を繰り返している可能性が非常に高いのです。
先ほど靭帯には『案内役』と『防御線』の役割があるとお伝えしましたが、この靭帯の案内を無視し続け、防御線を強行突破しながらも何とか動き続けようとしているのが、「捻挫が癖になっている」状態の動きです。
つまり「繰り返す捻挫は起こるべくして起こっている」ということ。靭帯に負担をかけるような身体の使い方、すなわち動きそのものを変えていかなくてはこれから先も「捻挫を何度も繰り返す」羽目になるのです。
「足首の外側の靱帯の捻挫」を例に考えてみましょう。
※ここでは分かりやすく足首だけを例にお伝えしていますが、他の関節の靭帯の捻挫を予防するのも基本的な考え方は同じです。
足首の靭帯に負担をかけないために何をすべきか?
足首の関節(足関節)の構造としては、メインの動きはつま先を上げ下げする方向の動きです。
くるぶしに対して足裏を内・外に向ける動きがないわけではないですが、その範囲はつま先の上げ下げの動きに比べると非常に小さく抑えられています。
足裏が外側を向きすぎるのを止めているのが内くるぶし周辺にある靭帯、足裏が内側を向きすぎるのを止めているのが外くるぶし周辺にある靭帯です。
外側のくるぶし周辺にある靭帯を痛めやすい方では、競技動作の中で足首の関節に対して足裏が内を向きすぎる動作をしているというのは容易に想像できます。
トレーニングを通して主に変えていかないといけないのはこの動きです。
足首の靭帯に負担がかからないようにコントロールしているのは、足首周りの筋肉だけではありません。股関節周辺から上半身まで全身の動きを通して負担を抑えた動きを引き出すことが必要です。
足首の靭帯に負担をかけないために、
①靭帯にかかる負担を足首以外の関節の動きを利用して「逃がす」ために、「身体操作能力」を高めるトレーニングが必要。
この身体操作を引き出すために、
②「筋力」が足りていない部分については「筋トレ」が必要。
③「関節の柔軟性」が足りていない部分については、「ストレッチ」も必要。
この3つ以外にも身体の状態に応じて取り組むべきことは多々ありますが、まずこの大枠を理解しましょう。
そしてこれらをトレーニングを通して身につけられると、怪我をしにくくなるだけではなく、同時に競技のパフォーマンスを高められるというメリットもあります。
これらが「トレーニングを通して良くなる方法がある」とお伝えする理由です。
具体的に『脚の捻挫』を回避する身体操作とは?
脚の靭帯(※特に足首や膝)を捻挫する場面というのは、関節を捻った状態(関節が動く本来の可動範囲を超えるような状態)で強く踏み込んでしまうときです。
ここでの捻挫の回避する方法としては、
①関節構造から逸脱した踏ん張り方の癖をなくす。
これは先ほどからお伝えしているように、しっかりと関節の構造にのっとった動きができているかどうかです。この動きが扱いこなせるようになるだけでも、捻挫を回避できる可能性は大きく高まります。
ポイントは地面との接地面と重心位置に対応した関節の位置関係です。
※例えば、膝と爪先の向きが常に一致した状態で股関節を利かせて動けるようにする。足の小指側で踏ん張る癖がある場合、母趾球でコントロールできるようにする。など。
②力強く踏み込むことを常としない。
捻挫しそうな場面になったとしてもその場で踏ん張って止まろうとしすぎずに、転んで受け身を取れば捻挫をしなくても済む場合があります。また転ぶまで大袈裟ではなくても、踏ん張らずにもう一歩足を踏み直すという対応方法もあります。
いつもいつも強く踏ん張りすぎる癖があるのであれば、それをなくす、つまり踏ん張りすぎない踏み込み方を身につけることが、捻挫を回避するのに役立ちます。
脚においては、この2点が捻挫を回避するための重要な要素です。
実際に捻挫をする場面は、個別具体的な要素も大きく影響するので、一概に「こうすればよい」とお伝えすることはできませんが、このような考え方のもと身体づかいを変えていくことができると、捻挫を繰り返す負のループから抜け出すことが可能です。
是非参考にしてみてください。
THE コツ™️ TRAINING
堤 和也