足趾を鍛える方法として『タオルギャザー』という足の指でタオルをたぐり寄せる運動が色々なところで紹介されたり、リハビリとして指導されることがありますが、このタオルギャザーという運動に意味はあるのでしょうか?
身体操作という観点から考えてみたいと思います。
足趾を動かす筋肉は大きく2つに分けられる。
内在筋と外在筋
足の裏だけにある筋肉を足の『内在筋』、足首より上から足裏につながる筋肉を足の『外在筋』と呼びます。
足の内在筋には、足趾の指の腹を地面に押し付ける場面で働き、前足部を広く面として使うことで地面からの反力を適切に受け止めたり、足趾で適切に踏ん張ってバランスをとったりすることができるようになります。


足の外在筋は、足趾で物を掴むような場合に働きます。ヒトが大昔に素足で樹上生活を行っていたような頃に足趾を手のように巧みに使い、木の枝に掴まっていたのであればこのような機能は非常に役立ったでしょう。しかし現代では足趾を手のように扱い必要性は健常人であれば皆無に近く、足趾は靴や靴下の中で「足部」として一つの塊としてしか認識されなくなってきているように思います。


目的は「踏ん張ることか?」「掴むことか?」
『タオルギャザー』というトレーニング方法は、主に足の外在筋機能に特化したものです。
「扁平足の改善」を目的としてタオルギャザーが運動処方・トレーニング指導される場合がありますが、タオルギャザーで主に鍛えられるのは足趾の外在筋です。扁平足の改善に必要な筋は、主に足の内在筋と後脛骨筋、長腓骨筋であり、これらはタオルギャザーでは効果的に鍛えることができません。
ここで冒頭の問いに戻りますが、タオルギャザーが有効かどうかは「何を目的にしているのか」で決まります。
足趾を曲げる力を鍛えたいのであれば◎
地面を捉えて、踏ん張る能力を身につけたいのであれば×
です。
例えば新体操での「甲出し」と呼ばれる足のかたちを作るにはタオルギャザーのように深く足趾を曲げるトレーニングは必須ですね。
タオルギャザーによるマイナスの学習に注意
タオルギャザーは足の外在筋を優位に働かせるため、足趾のトレーニングとしてやりすぎると靴の中などでも足趾を深く曲げたような状態になってしまう可能性があります。これは「Claw toe(クロートゥ)」と呼ばれ、地面に対して踏ん張る場合には適切でない足趾の使い方となります。
適切でないの理由としては、
①足趾の先端や爪の先端に過剰な圧が加わる
②足の内在筋が機能しにくくなる
③アキレス腱のバネ機能が弱まる
などです。
地面に対して、適切に踏ん張る能力を身につけるには、蹲踞系の姿勢やトレーニングが非常に有効です。
足首の骨折やその手術後のリハビリには非常に重要。
タオルギャザーのよくない点ばかり強調してしまったようにも思いますが、骨折やその手術後のリハビリでは非常に重要な働きをします。
足の外在筋の中でも長母趾屈筋は、足首の後方奥深く(距骨後方)を通る解剖学的な特徴から、この筋肉が硬くなると足首の可動域が狭くなります。特に足首近くの骨折や手術ではこの筋肉が硬くなりやすいため、早期からしっかりと動かしておく必要があります。

このようにタオルギャザーという運動一つとっても、目的によって効果的なもの、逆効果になりうるものがあります。これはあらゆる運動において言えるものです。
あなたが目的としているものに直結するトレーニングとなるように、その運動の構造を理解した上で取り組んでみてくださいね。
THE コツ™️ TRAINING
堤 和也