古武術的な動作の中で使われることのある「膝を抜く」という動き。

この「膝を抜く」動きが自由に扱えるようになると、上下の重心移動が少なくなり相手に動きが読まれにくくなるだけでなく、踏み込みの際に大きな推進力を得ることができるようになります。この「膝を抜く」動きには抜重を伴いますが、『抜重』については別の記事で詳細に解説しておりますのでそちらをご参照ください。
今回の記事ではステップに役立つ「膝を抜く」動作とはどのようなものか?どのように身につければよいのか?をご紹介します。
『膝を抜く』とは?
本記事で解説する膝を抜く動きは、「膝を前に押し出すようにして前進するための推進力を得る動作」と定義します。
「膝を曲げる」のと何が違うのか?
「膝を曲げる」と表現される動作では、膝周辺に力感を感じながら、つまり膝で体重を強く支えている感覚を感じながら膝が曲がっていく動作を誘導しやすくなります。

「膝を抜く」動作では、膝に力感を感じないように可能な限り力を抜いた状態で膝が外力によって自然と曲がっていくような動作となります。つまり膝周辺の筋肉を働かせて曲げようとするのではなく、
①重心が下がることで自然と膝が曲がる、
②地面からの反力によって押し返される力で膝が自然と曲がる、
③股関節、足関節(足首)で生み出された力が伝達されることにより膝が自然と曲がる動作です。
なぜ重心の上下動が減るのか?
膝を抜くことが出来ない場合、つまり膝に加わった外力を膝で受け流すことができない場合には、大腿四頭筋に強く力が入り膝の曲がりが止まる、もしくは膝が伸びます。膝が伸びてしまうと、伸び上がった分だけ重心が上昇してしまいます。
すると前進方向へ向かわせたいはずの力が上方へ抜けてしまい、重心が上がるだけでなく、前進する力も弱まってしまうのです。大腿四頭筋は別名「ブレーキ筋」とも呼ばれるのはこのような理由からでもあります。
イメージとしては「膝カックン」
「膝カックン」とは、膝を伸ばして立っている人の後方から「不意に」膝を前に押し出すように力を加えた場合に、膝の力が抜けて崩れ落ち、転びそうになるような一種のイタズラです。
この膝カックンをされたことのある人なら理解できるかと思いますが、「膝を抜く」動作はこの膝カックンのときの感覚に少し似ています。
単純に膝カックンされた場合は膝での支えが「不意に」瞬間的に失われ下方に崩れ落ちますが、カクンと「意図的に」膝を前方へ抜いた状態をつくり出すことで踏み込みの原動力を得ることができるようになるのです。
踵と膝のつながり
踵を押し出せば膝が前に出る。
足首から膝までは脛骨と腓骨の2本の骨で成り立っています。踵骨はその真下にあり、踵が持ち上がるとその力はダイレクトに膝へ伝わります。

膝が伸びている状態であれば背伸びするような動きとなり重心が高まりますが、重心を上げずに膝・股関節の動きで受け流すと膝が前に押し出されるような動きとなります。


踵を落とすことで初動の推進力を生み出す
上記の踵で膝を押し出す動きとは真逆ですが、初動(動き始め)のタイミングでは軽く踵を上げた状態から踵を地面に向かって落とすことで前進するための推進力を得ます。この「踵を落とす」ための原動力となるのは『抜重』です。

足関節(足首)の距骨を中心に踵が下がる動きで脛骨(スネ)が前方に傾きます。脛骨が傾き膝が前に抜けることで重心が前下方に移動し、前足部(つま先)に強い圧が生じます。この状態から瞬間的に素早く踵を押し出すことで強い推進力を得るのです。つまり「膝を抜く」動作は、『踵を落とす』の『踵を押し出す』真逆の動作を扱いこなせてこそ成り立つものなのです。
Pass the Knees – 膝抜きトレーニング3種 –
膝抜きカーフレイズ

まずはこの形が安定して取れるようになりましょう。この姿勢・動きは簡単そうに見えて、慣れていない人にとっては少し難しく感じやすいです。
足指がうまく使えない場合は、以下のストレッチ・トレーニングにも合わせて取り組んでみてください。
膝抜きステップ

膝抜きカーフレイズの状態からステップに繋げましょう。『抜重ステップ』の感覚で取り組めるとよりステップの質が高まります。
踵踏み込みステップ

「抜重」+「踵の踏み込み」+「膝抜き」の3つを統合して、素早く力強い初動・推進力を手に入れましょう。トレーニングとして一つ一つの動きを作るときには動きは比較的ゆっくりとなりますが、全てを統合した実際のステップの中ではすべてが「瞬間的に」遂行されます。
この3つの動きをそれぞれ動画で確認しながら習得し、素早く力強いステップを手に入れてください。

※【Pass the Knees – 膝抜きトレーニング – [Full ver.]】の動画視聴料は【¥440(税込)】となります。
動画視聴をご希望の方は、THE コツ™️ TOOLs オンラインショップから¥440円分の動画視聴チケットをご購入ください。
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代表 堤 和也